恋の糸がほどける前に


だから、こんなふうに葉純が傷付く必要ない。

俺が、自分の気持ちさえコントロールできない子どもだっただけなんだから。



俺の言葉を待っているのか、いつまでも顔を上げない葉純。

そんな葉純に声をかけようと口を開いた、瞬間だった。


「!」


目を奪われた、一筋の流れ星。



夜の空はどこまでも深くて、きれいで。

校長と一緒っていうのがちょっと癪だけど、俺も学校行事の中でこの観測会が一番好きだった。

去年の観測会は、終わった後に雫とこの部屋に来て、星が流れるのを待った。

何時間空を見つめても流れ星は見えなくて、だけど、諦めて帰ろうか、というときに小さな光が一筋流れたのを、ふたりで見たんだ。


流れ星のジンクス。


あのときはいくら待ってもなかなか流れてくれなかったのに。

今日は、あっさりとこんなにはっきりとした星の軌跡を見せてくれるなんて、皮肉。


ずっと一緒にいたい女に、今まさにフラれたところだっつーの……。

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