恋の糸がほどける前に

どんなケーキがいいかな~、とスマホをいじりだした芽美に、思わずふふっと笑みが零れてしまう。


……水原は、きっと雫先輩の手作りケーキとか食べるんだろうな。

ふたりでイルミネーションとか見るんだろうな。

あの優しくて温かい水原の手は、一日中雫先輩の手を離さないんだろう。


「……」

「あ、ここのケーキは!?すっごく美味しそう~っ、……葉純?」


楽しそうにスマホの画面を向けてきた芽美は、しかし私の顔を見て心配そうな表情になる。


「どうしたの?泣きそうな顔して」

「……え?」

「大丈夫?」


スマホを机に置いて、私に心配そうな視線を向けてくれる芽美。


あー、もう。

また、芽美に心配かけさせちゃった。

ダメダメ、勝手に落ち込んで傷付いて、こんなんじゃ全然前に進めない!

早く、自分の気持ちを終わらせなくちゃ。


「ごめんごめん、全然大丈夫!どこのケーキ!?楽しみー!」

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