恋の糸がほどける前に


ふいに、ななめ向かいに座っていた水原と目が合ってハッとした。


なんでだろう。

このタイミングだからなのかな。

……すごく、ドキッとした。


水原も驚いたようでパッとすぐに視線を逸らしてしまったから、いつもと違うそんな反応が余計に心臓に悪い。


……もう。

本当、どれだけドキドキさせられてるの、私。



「あー……、そうですねー。……可愛い子がいいですね」

「なにその無難な答え。お兄さんがっかり」

「すいません、実はあんまり考えたことなかったです。好きなタイプとか」


お兄ちゃんにからかわれて苦笑を浮かべる水原をなんだか直視できなくて、テーブルの上に乗ったお菓子に手を伸ばしては口に運ぶことを繰り返していた。


……可愛いって、何?

どんな子のことを「可愛い」っていうの?


水原が見た目だけで誰かを好きになるようなヤツじゃないって分かってるからこそ、無難すぎるけど色々な意味に捉えられるその答えが、じれったかった。


< 78 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop