天使の涙
心が震えたその瞬間



樹里と¨友達¨になったあの日、彼女は午後の授業に出ることなく、そのまま帰ってしまった。


『明日は土曜日で学校休みでしょ?だから遊びに行かない?』


待ち合わせは昼の十二時に学校の校門前。


何を着て行こうかとか、一体どんな話をするんだろうとか、そんなことばかり考えながらその日は眠りについた。



「おはよー。偉いめかしこんどるけど、どこか行くんか?」


次の日の朝、もう十時を過ぎていると言うのに、寝ぼけ顔でスウェット姿のままリビングにやって来た畑山先生に話し掛けられた。



「と、もだちと遊びに行くんです」


「友達?!」


なんてオーバーなリアクション。
まぁ、今まで友達なんていなかった私が、いきなり友達と言う単語を口にしたのだから驚くのも無理ないことか。


「そうかそうかー!!楽しんで来いよ?お土産は気にせんでええけね」


お土産なんて買う訳ないだろ、と言う突っ込みは敢えてしないでおこう。


キャラじゃないし。


「行って来ます」


「ん。気をつけりぃね」


パタンと玄関の扉を閉じて、私が施設から出て行った後、畑山先生は大きな欠伸を一つしてリビングのソファーに腰を降ろした。


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