天使の涙


まるでスライド写真を見ているかのように、カシャカシャと場面が移り変わる。


見たくないのに、思い出したくないのに、それでも目を背けることはかなわない。


『大丈夫』


誰?


『もう、大丈夫だから』


額に伝わるヒヤリとした感触。
とても気持ち良くて、何故か安心する声。


「う…ん……」


「お。ようやく起きたか」


……………


目が覚めて、朦朧とする意識で確認できたのは、ここが外だと言うことと、まだ辺りが暗いことから、あれからさほど時間は経過してないと言うこと。


そして、いつぞやかの胸糞悪いあの男の子の膝枕で私が横になっていると言うこと。


「ぎゃ!!……っ」


急に飛び起きたせいで、また視界が振れてしまった。


「倒れてすぐ起き上がるやつがいるかよ、馬鹿か?」


男の子は私の身体を強引に引き寄せて、まだ寝ていろと言って横に倒すと、私の頭を自分の膝の上に乗せた。


「過換気症候群か…厄介な病気持ってんな。お前」


「………」


「あ?何怒ってんだ」

まさかこの人に助けられるとは…。一生の不覚。


今日は厄日だ。でなきゃこんなに悪いことが続けて起こる訳がない。


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