天使の涙


「何怒ってんだって聞いてんだけど!!耳ついてんのか、耳っ」


「五月蠅い。聞こえてるわよ。ただ、あんたと喋りたくないだけ」


「はぁ?」


今度はゆっくりと慎重に立上がる。
汚れたズボンをはたいて、何事もなかったかのようにスタスタと歩き始めた。


「チッ……礼くらい言えよ」


呼び止められて立ち止まり、首だけを動かして横目で男の子を睨み付けるようにして見る。


「助けていただいてどうもありがとう。でも貴方に助けてって言った覚えは無いし、助けて欲しかった訳じゃないわ。以上。さようなら」


男の子は呆気にとられたようにポカンと口を開け、足速に去って行く私の後ろ姿を見つめる。


「……ブッ。おもしれー奴」


眉を落としてクシャリと笑い、長い前髪を指先に絡ませ遊ばせた。


「……ああ。そう言えば、エセ教師の言ってた凜ってあいつのことか」



・つづく・
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