天使の涙
私はそこでの生活に上手く馴染むことが出来なくて、結局、他の施設を盥回しにされて、六日前に今の施設にやってきた。
ここでもう四ヶ所目。
『凜ちゃん…だっけ?あの子、ちっとも他の子たちと上手くやれないのよ。いくらあんな目に合ったからって…あれからもう十年も経つって言うのに』
『ちっとも笑わないのよ?話し掛けても無愛想だし、可愛げってものがないわよねぇ、本当』
笑わないんじゃなくて、笑えないの。
私の感情は、十年前のあのアパートにすべて置いて来てしまったから。
欠落してしまったんだ。何もかも。
・つづく・