始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
蕩ける
彼の腕に包まれて、私の虚勢が剥がれていく。

まるで吸い付くように、彼の胸に密着し瞳を閉じて頬を寄せる。
ああ、私はこの温もりの中に戻りたかったんだと感じてしまう。
私の背中に回された腕の力が僅かに緩むのを感じて見上げると、優しい眼差しに少しだけ笑みを浮かべて視線を合わせてくる。

何て色気を見せてくるの・・・

ゆっくりと近づいてくる彼の顔に応えるように、瞳を閉じて息を止めてしまう。
結んだ唇にも力が入ってしまい、僅かに顔を引いてしまう。
すると唇に優しく暖かい体温が重なった。
唇の触れた瞬間の柔らかな感覚に、ゾクリと身体に甘い痺れが走る。
その感覚にわずかに唇が開き、もっと彼の唇を感じられるように、軽く彼の下唇を食む。
するとまるでお返しのように彼は私の上唇を優しく食んできた。

ああ・・私、この唇を覚えている・・・。

そんな彼に愛しさが込み上げてきて、もっと密着できるように彼の背中に回した手に力が入る。
感じたい・・。もっと、もっと・・欲しい。
そう願う気持ちに沿って、密着し続ける唇を更に求めてしまう。

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