始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
ゆっくりと後ろに倒されて耳元から髪をかきあげられ、吐息がもれてしまった。
するとそれを飲み込むかのように深く唇を求めてくる。
そして僅かに彼の唇が離れると、愛しい物を追いかけるかのように私の視線が追ってしまう。
ほんの少し見上げると、とても近い距離で目が合ってしまい、また胸がキュッと刺激される。

その瞳はとても甘く優しい。

そして真っすぐ私を求めてくる。

何とも言えない恥ずかしいような感情に戸惑っていると、彼は微笑を見せ私の鼻先に軽くキスを落としてから柔らかい声ででささやいた。

「咲季さん、可愛い」

余裕をうかがえてしまう彼に、表現できない感情がわく。

「またからかってるでしょ」

戸惑いをごまかすように少しだけ睨みをきかせて返すと、右手でそっと私の左頬を包み、親指で優しく撫でてきた。
それはくすぐったい位に優しくて、鼓動は速度を増す。

「やっと手が届いた」

そう言いながら左頬を撫でていた親指は、滑るように唇に降りてきて、さっきよりも優しくゆっくりと下唇を撫でて私の耳にささやいた。

「僕の咲季さん」

その言葉に胸が震えた。

完敗だ。もう抗えない。

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