始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
彼の言葉に答える代わりに唇を撫でている手を取り、その親指にキスをした。

そしてその指先をくわえて彼の瞳を見つめると、今度は私の手の甲にキスを落としてから頬にキスをし、ゆっくりと唇に近づいてくる。
触れるような軽いキスから段々と角度を変え深くなってくる。
その度にリップ音が脳を刺激して、私を誘惑する。
漏れる吐息が彼の舌を誘い、交わるように隙間なくからまる。
素肌に滑る彼の指先が、私の服も羞恥心も一緒に剥いでいく。

ゾクゾクと身体に走る快感が、私の身体をより一層彼に密着させる。
唇から首筋、そして鎖骨へと滑り与えられるキスの快感は堪らなく愛しい。

「ん・・」

その優しさに吐息が漏れる。
それを飲み込むかのように深いキスをされて、敏感に感じてしまうことに抵抗があるのに、拒否することができない。
身体を滑っていく彼の指先に、ビクンっと反応して思わず小さな悲鳴をあげてしまった。

「・・っあ」

自分の声に堪らなく羞恥心を感じて視線を反らすと、彼は耳元に唇を寄せてささやいた。

「咲季さん可愛い、もっと見せて」

そう言って耳をゆっくりと刺激してくる。

「・・・いや」

ゾクゾクと走る快感から身体をよがっても、押さえつけられてしまう。

「ダメですよ。逃してあげられません」

「や・・だぁ・」

懇願しても許してくれない。

抗えない刺激に彼の身体にしがみつくと、私の唇にそっと優しく唇をのせてきた。
私はその唇が愛しくて自分からも求めると、ゆっくりと彼の指が滑っていく。

その緩やかな動きが、私から深い吐息を引き出す。

僅かに開いた唇が懸命に酸素を求めるのに、彼はそれを許してくれない。
深く深く私を追い詰める。
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