ラストバージン
「誰かを頼るって事は、その相手を信頼していないと出来ない事です。だからきっと、結木さんは〝そんな風に出来ている先輩〟なんだと思いますよ」


ゆっくりと、まるで諭すような口調に心も耳も自然と傾き、榛名さんの言葉を理解した直後にはくすぐったくなった。
それはきっと、彼の言葉がお世辞とは思えないくらい真っ直ぐで、私への褒め言葉が本心から紡がれたのだろうと思う事が出来たから。


胸の奥をくすぐるそれは、やがて照れ臭さに変わっていって……。

「そんな風に言って頂けたのは初めてです。榛名さんって、褒め上手ですね」

前半は感謝を込めつつ、後半はつい照れ隠しで少しばかり不躾な事を言ってしまった。


「すみません、褒め上手だなんて言い方……」


それに気付いてハッとした時には、榛名さんは小さな笑みを浮かべていた。


「褒め上手な訳じゃないですけど……。教師をしている僕には必要なテクニックだと思うので、褒め言葉として受け取りますね」


慌てた私に気を遣わせない為なのか、少しだけおどけなように笑った彼の言葉にホッとする。
榛名さんが高校の教師だという事はココアを飲んだ時に聞いていたけれど、こうして話していると彼にとても向いているような気がした。

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