ラストバージン
Count,07 ときめき方
新年度を迎えた四月。
異動や新人の入職で病棟内のメンバーがガラリと変わり、リハビリ科病棟にも四人の新人が入って来た。


代わりに異動した同僚や後輩は仕事が出来る人達ばかりで、残ったメンバーにも頼れる人はいるものの、新人を育てる事や今後への不安でいっぱいだった。


矢田(やだ)さん、これ間違ってるよ。患者さんの名前、〝郎〟じゃなくてにくづきの〝朗〟ね」


中でも特に手が掛かるのが専門学校出身の矢田さんという女の子で、この二週間はほとんど彼女の指導に追われていた。


新人だからわからない事や多少のミスはあるだろうし、誰だってそこから学んで成長していくもの。
私自身もその経験を経て今があるけれど、矢田さんのミスはとにかくケアレスなものばかり。


看護記録の患者名や病名が間違っているとか、朝食に牛乳の飲めない患者さんに牛乳を出してしまうとか。
正直、実習で来る学生だってもう少し出来る。


威圧的にならないように根気良く丁寧に注意をしているつもりだけれど、本人に気を付ける気がないのか一向に成長せず、もう何度つまらないミスを見付けたのかわからない。
おかげで、自分の仕事に手が付けられず、明日の主任ミーティングの準備すら出来ていなかった。

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