ラストバージン
「ねぇ、矢田さん。こういう事は必ず見直しをしてね。そうすれば、ケアレスミスは減るはずだから」


優しい声音で話すように意識して、矢田さんを真っ直ぐ見つめる。
不機嫌だからなのか、バツが悪いからなのか、目を逸らしている彼女と視線が交わる事はなかったけれど、それでも私は視線を動かさなかった。


「看護記録やちょっとしたメモなら何とかなるけど、こういうミスが大きな事故になる事もあるから、チェックは怠らないように気を付けてね」


矢田さんの様子を窺う私を、彼女が眉をグッと寄せたまま見た。


「……私、ちゃんとチェックしてます」


苛立ち混じりの声と反抗が色濃く見える態度に、目を小さく見開いてしまう。


「これだって二回もチェックしたのに間違っていたんだから、仕方ないと思うんですけど」


怒りよりも呆然としてしまって、すぐに言葉を返す事が出来なかった。
ここまで開き直った態度が若さのせいだと思うのは、さすがに同世代の子達に失礼だろう。


どう考えても、矢田さん自身に問題があるに違いない。
実際、彼女以外の三人は注意をしたら素直に受け入れているし、次からは気をつけようという努力が目に見えるのだから。

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