ラストバージン
「あなたにその気がないから、私がこうして用意しているんじゃない」

「私は、そんな事頼んでないでしょう? もう子どもじゃないんだから、自分の恋愛くらい自分でどうにかするよ」


「子どもじゃないから、心配しているんじゃない! いい歳していつも、仕事、仕事って……。あなたの仕事が大変なのはわかるけど、仕事ばかりしていて何になるの? 仕事はいざって時にあなたを守ってくれないんだから、そんなものにかまけてばかりじゃ――」

「やめてよ!」


声を荒げた私に、母が目を小さく見開く。


「私は誇りを持って看護師をしているの!」


それに気付きながらも、我慢出来なかった。


「結婚するのがそんなに偉いの?」


私だって結婚を夢見ていた事もあるし、本気で結婚を考えた事もある。


だけど……。

「私だってちゃんと考えてるよ! 少なくとも、お母さんが思ってるよりもずっと真面目に考えてる! でも、仕方ないじゃない! どんなに考えてみても、どうしても前向きに結婚を考えられないんだから!」

今の職場で勤務するようになってからずっと悩み抜いた結果が、この状態なのだ。


「葵……」


しばらく黙っていた母がようやく口を開いた時、その表情は酷く困惑していた。

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