ラストバージン
お祝いに来たはずなのに喧嘩をするなんて、なんて情けない話なのだろう。
母が私の心配をしてくれているのに、それを受け入れられない自分が嫌になる。


「ごめん……」

「お母さんも言い過ぎたわ……」


ポツリと零した私に、同じような声音が返って来た。


気の強いところは母譲りで、母と喧嘩になるのはいつだって私。
出来る事なら、私だって姉のようになりたかった。


「あんな風に言っちゃったけど、お母さんは葵が仕事を頑張っているのはわかっているつもりなのよ」

「うん……」

「いい大学を出て、立派な病院に就職して……。再就職した病院だって、ちゃんとしたところだし……」


微苦笑を浮かべる母からは申し訳なさが滲み出ていて、母の好意を素直に受け取れたらどんなにいいだろうか、と気持ちが沈む。


「でも、本当に心配なのよ。例えば今すぐに出会った人と恋愛したとしても、結婚や出産はまだまだ先になるでしょう? 結婚はともかく、出産は歳を追えば追う程にリスクが高くなるじゃない。もちろん、あなたは看護師だから、こんな事言われなくても充分わかっているだろうけど……」


私に気遣いながら言葉を選ぶ母を前に、強引に立ち去る事が出来なくなる。

< 15 / 318 >

この作品をシェア

pagetop