ラストバージン
「矢田さんが入って一ヶ月になるけど、仕事はどう?」
「え?」
「楽しい?」
ジョッキを置いた私は、敢えて矢田さんが感じていないであろう表現を選び、戸惑いを見せた彼女に微笑んだ。
「正直、いっぱいいっぱいです……」
たったそれだけの答えだったけれど、矢田さんの素直な気持ちなのだろう。
それを聞けただけでも、彼女を誘って良かったと思えた。
「じゃあ、つらい?」
「……ほんの少しだけ、つらいです……」
きっと、本当はとてもつらいのだろう。
俯いてしまった矢田さんの表情は見えなかったけれど、彼女の震えそうな声がそう語っているような気がした。
「ねぇ、矢田さん」
「はい」
「もしよかったら、看護師になろうと思った理由を聞かせてくれる?」
ゆっくりと顔を上げた矢田さんは、どうしてそんな事を訊くのかと言わんばかりの表情をしていたけれど……。
「私が中学生の時……母親が入院したんです……」
彼女はゆっくり、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「うん」
急かしてしまわないように優しく相槌を打ち、微笑みを浮かべる。
そんな私に促されるように、矢田さんは戸惑いを見せたままにしながらも唇を動かした。
「え?」
「楽しい?」
ジョッキを置いた私は、敢えて矢田さんが感じていないであろう表現を選び、戸惑いを見せた彼女に微笑んだ。
「正直、いっぱいいっぱいです……」
たったそれだけの答えだったけれど、矢田さんの素直な気持ちなのだろう。
それを聞けただけでも、彼女を誘って良かったと思えた。
「じゃあ、つらい?」
「……ほんの少しだけ、つらいです……」
きっと、本当はとてもつらいのだろう。
俯いてしまった矢田さんの表情は見えなかったけれど、彼女の震えそうな声がそう語っているような気がした。
「ねぇ、矢田さん」
「はい」
「もしよかったら、看護師になろうと思った理由を聞かせてくれる?」
ゆっくりと顔を上げた矢田さんは、どうしてそんな事を訊くのかと言わんばかりの表情をしていたけれど……。
「私が中学生の時……母親が入院したんです……」
彼女はゆっくり、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「うん」
急かしてしまわないように優しく相槌を打ち、微笑みを浮かべる。
そんな私に促されるように、矢田さんは戸惑いを見せたままにしながらも唇を動かした。