ラストバージン

* * *


それは、今から数年前の、母校が経営している系列病院で働いていた時の事。


当時、看護師として無事に四年目を迎える事が出来た私は、それまで配属されていた外科から小児科に異動したばかりだった。
仕事に慣れ、看護師としての自覚も自信も持てるようになり始めた頃で、子どもが好きな私にとって小児科で働けるというのは嬉しい事でもあった。


だけど……大きな病院の小児科病棟に、軽症の患者さんなんてほとんどいない。
入院している子どもの大半は命の期限がわかってしまっている、言うなれば余命いくばくもない子達ばかりだった。


それまでも患者さんの死に立ち会った事は何度もあったし、その度につらい思いもした。
担当していた患者さんが初めて亡くなった時にはご家族の前で泣いてしまい、後で指導看護師と師長に注意された事もあった。


それからは、泣いてしまいそうな時には誰にも見付からないような場所でこっそり涙を零し、帰宅してからはベッドに突っ伏して泣いた事だってあった。


だから、何度も経験して来た事ではあったけれど……。それでも、まだ小さな命が尽きていくのを目の当たりにするのは、それまでに経験していた悲しみを凌駕するようなつらさだった。

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