ラストバージン
小児科病棟に異動して半年以上が経っても泣く事が多かった私は、非常階段の最上階に当たる踊り場で一人こっそりと泣いていた。
元々、この非常階段は職員以外は立入禁止になっていて、職員だって緊急を要する時以外はあまり使っていない。
だから、一人になりたい時には最適な隠れ家のようなこの場所は、いつからか私の泣き場所になっていた。
「……よく泣いているね、君は」
この場に来て十分が過ぎただろうかという頃、どこからともなく困惑混じりの声が聞こえて来た。
「え……?」
突然の事に驚いて顔を上げた私の視界に入って来たのは、清潔感が漂う白衣を身に纏った男性。
屋上と階下の間の踊り場からゆっくりと上がって来た彼は、羨ましくなる程にくっきりとした二重の瞳を緩め、どこか困ったように微笑んだ。
「二週間程前にも、ここで泣いていただろう」
手繰り寄せるまでもなく、まだ鮮明に残っている二週間前の記憶。
そこには、確かにこの場所で泣いていた自分の姿が刻まれている。
どうしてそんな事を知っているのかと疑問を抱いた私に近付いて来た男性からは、消毒液特有の微かな匂いとシャンプーのような清潔な香りが混じったものがフワリと漂って来た。
元々、この非常階段は職員以外は立入禁止になっていて、職員だって緊急を要する時以外はあまり使っていない。
だから、一人になりたい時には最適な隠れ家のようなこの場所は、いつからか私の泣き場所になっていた。
「……よく泣いているね、君は」
この場に来て十分が過ぎただろうかという頃、どこからともなく困惑混じりの声が聞こえて来た。
「え……?」
突然の事に驚いて顔を上げた私の視界に入って来たのは、清潔感が漂う白衣を身に纏った男性。
屋上と階下の間の踊り場からゆっくりと上がって来た彼は、羨ましくなる程にくっきりとした二重の瞳を緩め、どこか困ったように微笑んだ。
「二週間程前にも、ここで泣いていただろう」
手繰り寄せるまでもなく、まだ鮮明に残っている二週間前の記憶。
そこには、確かにこの場所で泣いていた自分の姿が刻まれている。
どうしてそんな事を知っているのかと疑問を抱いた私に近付いて来た男性からは、消毒液特有の微かな匂いとシャンプーのような清潔な香りが混じったものがフワリと漂って来た。