ラストバージン
翌日、私は仕事を終えた後に閉店直前の旅行代理店に飛び込み、十枚近くのパンフレットを貰った。
それから、閉店が数分遅れたせいで迷惑そうな表情を見せた店員の事なんて気にも留めずに、まるでスキップでもするんじゃないかというような足取りで帰宅した。


昨夜はあまりにも嬉しくて、ちっとも寝付けなかった。
行き先はどこがいいかと考えては笑みが零れ、空が白み始めるまでパソコンでネットサーフィンをしてしまった程。


おかげで今日は欠伸が止まらなくて、もう少しで先輩に叱られるところだった。
ただ、いつもなら寝不足になってしまった事を反省していただろうけれど、今の私はそんな事を考える余裕もない。


頭の中は、とにかく日高先生との旅行の事でいっぱいだったから。
今日は残念ながら非常階段では会えなかったけれど、次に会ったら色々と相談する事がある。


本当は電話をしたい。
だけど、院内に泊まり込む事も多い日高先生は携帯の電源を切っている事が多くて、余程の事がない場合は私から連絡をする機会はない。


テーブルに並べたパンフレットを前に逸る気持ちを抱きながらも、彼と相談する前までに良さそうなところを決めておこうと、何ヶ所かピックアップした。


だけど……。

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