ラストバージン
「いいんですか……?」

「付き合ってから、まだどこにも連れて行ってあげてないからね。一日は実家に帰りたいから一緒に過ごせないんだけど、残りの二日は葵との為に空けておくつもりだよ。それとも、葵は旅行なんて行きたくない?」


慌てて首をぶんぶんと横に振ると、日高先生はクスリと笑った。


「じゃあ、決まりだね。一泊だからせいぜい温泉程度だろうけど、それでもいい?」

「はい!」


パァッと効果音が鳴りそうな笑顔になった私に、日高先生もフワリと笑った。


「葵と休みが合えばいいんだけど」

「絶対に合わせます!」


日高先生と旅行に行けるのなら、残りの有休は全部流してしまってもいい。
それに、忙しい彼はきっと休暇の日取りなんて選べないだろうから、私が合わせるしかないだろう。


「休暇は一ヶ月後の学会が終わったら取る予定だから、決まったらすぐに教えるよ」

「はい」


思わず「すごく楽しみ」と口にしてフフッと笑うと、日高先生が嬉しそうな表情になった。


「そんな顔を見せられたら、何が何でも休暇を取らなきゃいけないね」


彼は笑いながら冗談混じりの言葉を残し、アパートの下に停めていた車で職場に戻った。

< 218 / 318 >

この作品をシェア

pagetop