ラストバージン
非常階段の踊り場で呆然と立ち尽くす私は、しばらく状況を飲み込む事が出来なかった。
ようやく日高先生に振られたのだとはっきりと理解した時には、顔は涙でぐちゃぐちゃになってしまっていた。
遠くにいる自分が、『気合いを入れたメイクが台無しだ』と呆れている。
その一方で、ズキズキと痛み出した胸の傷に更に現実を突き付けられ、涙は止まらなかった。
俯く視界の端に映る腕時計が何時を示しているのか気にしながらも、こんな酷い顔で仕事に戻る事なんて出来ないと考えて一歩も動けない。
(どうして……? この間は、『旅行に行こう』って……)
甘い時間を過ごした後の言葉は、もしかしたら夢だったのだろうか。
何が現実なのか、よくわからなくなっていく。
(早く戻らないと叱られちゃう……)
それでも、頭の片隅には冷静な私がちょこんと居座っていて、『早く仕事に戻れ』と命令して来る。
腕時計を見ると、休憩時間はとっくに終わってしまっていた。
「ちょっと結木さん! どうしたの!?」
重い足取りで戻った私を待っていたのは、師長や先輩達の驚きの表情。
泣いたのが一瞬でばれてしまうような酷い顔だったおかげか、叱られる事はなかった。
ようやく日高先生に振られたのだとはっきりと理解した時には、顔は涙でぐちゃぐちゃになってしまっていた。
遠くにいる自分が、『気合いを入れたメイクが台無しだ』と呆れている。
その一方で、ズキズキと痛み出した胸の傷に更に現実を突き付けられ、涙は止まらなかった。
俯く視界の端に映る腕時計が何時を示しているのか気にしながらも、こんな酷い顔で仕事に戻る事なんて出来ないと考えて一歩も動けない。
(どうして……? この間は、『旅行に行こう』って……)
甘い時間を過ごした後の言葉は、もしかしたら夢だったのだろうか。
何が現実なのか、よくわからなくなっていく。
(早く戻らないと叱られちゃう……)
それでも、頭の片隅には冷静な私がちょこんと居座っていて、『早く仕事に戻れ』と命令して来る。
腕時計を見ると、休憩時間はとっくに終わってしまっていた。
「ちょっと結木さん! どうしたの!?」
重い足取りで戻った私を待っていたのは、師長や先輩達の驚きの表情。
泣いたのが一瞬でばれてしまうような酷い顔だったおかげか、叱られる事はなかった。