ラストバージン

* * *


「葵! 久しぶり!」


八月も終わりを迎えようとしている頃、小さなオープンカフェで待ち合わせをしていた菜摘に同じ言葉を返し、テーブルとお揃いのアイボリーの椅子に腰掛けた。


「菜摘、日焼けしたね」

「今年は三回も海に行ったからね〜」

「澤部さんと?」

「二回はね。一回は友達と旅行に行って来たの。これ、お土産」

「ありがとう」


差し出された小さな紙袋には、クッキーらしき缶が入っていた。


「葵、ちょっと痩せたんじゃない?」

「あぁ、うん。ほんのちょっとだけね」

「しかも、疲れた顔してる」


苦笑した菜摘に、曖昧な笑みを返す。
彼女に指摘された通り、この二週間で二キロ程落ちた。


その原因は、間違いなく榛名さんとの事だろう。
彼との事を考えてばかりで食欲不振になり、更にはそこに寝不足が加わってしまっているせいで、疲労混じりの表情はすっかり癖になってしまいそうだった。


「ダイエットしてる感じじゃなさそうだし、またストレスで痩せたんじゃない? 確か、就職した頃もそうだったでしょ?」


そんな私の顔を見つめたままの菜摘が、眉を小さく寄せて心配げな顔をしていた。

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