ラストバージン
「……軽蔑?」


怪訝な顔を見せた菜摘が、私を見つめながら小首を傾げる。


「私、葵にそういう気持ちを持った事ないけど」

「それはわかってるよ。でもね、きっと過去の事を聞いたら軽蔑されちゃうから」


薄く笑みを浮かべた私に、菜摘が瞳をぱちくりとさせた。


「しないけどな、私」


それから、彼女はきっぱりと言い放った。


「え?」

「葵ってさ、不用意に人を傷付けたり、浅はかな事はしないでしょ? そういう葵を知ってるから、私はどんな時でも葵の味方でいたいと思ってる」


目を小さく見開いてしまった私に、菜摘は迷いのない瞳を向けている。


「これだけ付き合いが長いんだもん。故意に犯罪でも犯さない限り、今更軽蔑なんてしないよ」


当たり前のようにハハッと笑った彼女が、すぐに自嘲混じりの微笑みを浮かべた。


「まぁ、それでも私には話せないって言うなら、もう何も訊かないけどさ」


そんな表情を前にして、もうはぐらかすなんて出来ない。
そう感じた直後に眉を小さく寄せ、一呼吸置いてからゆっくりと過去の罪を告白した。


「……私、不倫してたの」


やっぱり軽蔑されるかもしれない、という覚悟を密かに抱きながら……。

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