ラストバージン
「で、一体何をそんなに悩んでるの?」

「さっき話した通り、私は不倫なんてしちゃったから……。色々悩んだけど、過去を隠して付き合うのは私には無理だし、その事を打ち明けたんだ……」

「それで?」

「すごく驚いた顔をしていて……。絶対、軽蔑されたと思う……」

「本人がそう言ったの?」


首を小さく傾げた菜摘に、ゆっくりとかぶりを振る。


「言われてないけど、きっとそうだよ。だから、榛名さんの話を聞くのが恐くて、告白も断って逃げちゃった」

「はぁっ!?」


自嘲気味な笑みを浮かべた私に、菜摘が声を上げた。
途端に周囲から視線を浴び、慌てて頭を下げる。


当の彼女はそんな事はお構いなしに、身を乗り出した。


「バカ! どうして断ったりしたのよ!」

「だって……」

「だって、じゃない! 相手がどう思ってるのかもわからないうちに断るなんて、いくら何でもバカ過ぎる!」


菜摘の言い分もわからなくはないから、返す言葉が思い浮かばない。


「もう! 葵は無駄に真面目過ぎるんだよ! 過去の事だって葵がいつまでも責任を感じる必要はないし、もっと肩の力を抜きなって!」


力説する彼女に、ただ苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。

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