ラストバージン
「だから、今度こそ僕の気持ちを受け入れて欲しい。これでも、結構前から結木さんの事が好きだったんだから」

「え?」


予期しなかった本音にキョトンとすると、悩ましげな笑みを零された。


「この際だから打ち明けるけど、僕は結木さんの事がずっと前から気になっていたんだ。初めて結木さんと話した時よりも、遥かに前からね」


益々大きく見開いた私の瞳に映る榛名さんは、照れ臭そうにしているけれど……。

「ようやく巡って来たチャンスを何とか活かして仲良くなれたんだから、あんな理由で振られるなんて納得出来ない」

それでも、彼は自分の想いを真っ直ぐぶつけてくれる。


「他に好きな人がいるのならまだしも、過去に囚われて振られるなんて納得しないし、今がダメなら何度でも告白するよ」


眩しいくらいのひたむきさを、どうすれば拒否出来るのだろう。


「だから……」


榛名さんの事を好きな私には、その方法は到底見付けられそうにない。


「結木さん、もし僕の事を今も変わらずに好きだと思ってくれているのなら、僕と付き合って下さい」


再び涙が溢れ出していた目尻をそっと拭った彼は、まるで春の陽溜まりのように柔らかな笑顔を見せながら優しく言葉を紡いだ。

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