ラストバージン
「きっと、結木さんを一番責め続けているのは、結木さん自身だよね?」


全てを見透かしたような苦笑を浮かべた榛名さんに、私は言葉を失って目を小さく見開いた。


「ずっと後悔して自分を責めていたからこそ、僕に過去を打ち明けたんだよね?」


瞳に溜まっていた涙が、ポロリと零れ落ちる。


「結木さんみたいな人は、もう少しずるい生き方を身に付けるべきだと思う」


心配そうな顔をした榛名さんは、涙が伝い始めた私の頬に指先でそっと触れた。


「でも、僕は……」


それから雫をそっと拭い、まるで私の心を包み込むようにフワリと笑った。


「ずるくはなれない……そんな不器用で真面目な結木さんが、とても好きだ」


胸の奥にストンと落ちた言葉からは、どんな言葉よりも強い〝愛してる〟が聞こえたような気がして……。嬉しくて嬉しくて、気が付けば涙で濡れる瞳をそっと緩めていた。


「過去を打ち明けてくれて嬉しかった。僕の答えを勝手に決め付けた事はまだ怒ってるけど、それはこれからじっくり償って貰う事にするよ」


そんな私を慈しむように見つめていた榛名さんが微笑んだ直後、何だかとても嫌な予感を抱いてしまったけれど……。同時に、〝これから〟という言葉に胸の奥が温かくなった。

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