ラストバージン
* * *
「お邪魔します」
「どうぞ」
玄関のドアを開けてくれた榛名さんに続き、部屋の中に入っていく。
1LDKの室内は私が住んでいるマンションの部屋よりも広く、テーブルやソファー等の家具は全てシンプルな物で統一されている。
彼はネクタイを緩めながらエアコンを入れ、本人いわく〝コーヒーブラウン〟だという二人掛けのカウチソファーに腰を下ろすと、背負っていた緊張と疲労を出し切るように息を大きく吐いた。
「お疲れ様。それから……」
「ん?」
「ありがとう」
ソファーに歩み寄った私は、満面の笑みを見せた。
「何が?」
「私、両親にずっと心配を掛けていたから、申し訳なかったんだ。でも、今日は榛名さんのおかげで、ようやく少しは安心して貰えたと思うから」
怪訝な顔にそう告げると、榛名さんが小さく笑った。
「別にお礼を言われる筋合いはないよ。僕がちゃんと会っておきたかっただけなんだから」
「それでも、私は嬉しかったから」
「今朝はあんなに嫌がってたくせに」
「それはもう言わないでよ」
帰りの車内でも既にその事でからかわれていた私は、苦笑しながらも彼の隣に腰掛けた。