ラストバージン
ようやく準備が整ったテーブルには、来客用のご馳走が並んでいた。
あれから一時間近くも掛かったのは、母と姉が張り切ってメニューを追加したから。


テーブルいっぱいの料理に子ども達は大喜びで、榛名さんも感激していた。
一品食べるごとに必ず「美味しい」と言う彼に、母も姉もとても嬉しそうにしている。


「たくさんあるから、遠慮しないでどんどん食べてね」

「ありがとうございます」


母は次から次へと勧め、榛名さんはいつもよりもたくさん食べていた。
食後は彼の手土産の焼菓子と、孝輔さんが買って来てくれたケーキを堪能し、私も満腹になった。


実家に来るまではあんなにも憂鬱だったのに、今はただただ楽しい。
桃子と孝太はすっかり榛名さんに懐き、二人に散々引き止められてしまった私達が腰を上げたのは、結局は夕食も済ませた後だった。


「今度は泊まって行きなさい」


お酒を勧められた榛名さんが「車で来ているので」と断ると、残念そうにしていた父が帰り際にそんな風に言ってくれて……。

「ありがとうございます。次はぜひ、お言葉に甘えさせて頂きます」

彼も笑みを見せ、孝輔さんと三人で〝男の約束〟を交わしていた――。

< 305 / 318 >

この作品をシェア

pagetop