ラストバージン
「改めまして、佐原聡と申します。本日はありがとうございます」

「結木葵と申します。こちらこそ、ありがとうございます」


実にスムーズな挨拶を口にした佐原さんに、姿勢を正して言葉を返す。
すると、彼がニッコリと笑った。


「結木さん、堅苦しいのはここまでにしませんか?」

「え?」

「こんなお店ですから少しは肩肘を張らないといけないでしょうが、出来ればラクな気持ちで過ごして頂きたいですし、僕自身もそうしたいです」


唐突な提案にキョトンとしてしまったのは、もっと堅苦しいものを想像していたから。


「それに、結木さんと僕は同年代だと伺っていますから、その方がいいと思うんです」


少しだけ気が抜けたものの、さすがにラクな気持ちで過ごすのは無理だろう。


「……ダメでしょうか?」


「いえ、そんな事は……」


慌てて首を横に振ったけど、戸惑いを隠せない。


「良かった。じゃあ、もっと肩の力を抜いてリラックスして下さい。せっかくですから、楽しみましょう」


ニコニコと笑う佐原さんは、とても穏やかな口調で話してくれているけれど……。結局、私は上手くリラックス出来ないまま時間が過ぎていき、そのうちに最初の料理が運ばれて来た。

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