黒愛−kuroai−
私のあげたカルボナーラは、少しも減っていなかった。
「帰るぞ」
柊也先輩はそう言って、右手に鞄と伝票、左手に私の腕を掴んだまま出口に向かった。
帰り道、彼は無言で、終始不機嫌。
夜に入り、辺りはすっかり暗くなっていた。
一応家まで送ってくれたが、やはり言葉はなく、背を向けられた。
帰ろうとする彼の腕を掴み、引き止めた。
「柊也先輩、怒ってますよね?
すみませんでした…
でも私、先輩が悪く言われるのに、我慢できなくて…」
申し訳なさそうにそう言うと、振り返り、やっと私を見てくれた。
その目はまだ怒っている。
ただ、私と鈴奈の言い争いについての怒りじゃないみたい。
彼は疑惑の目を向け、こう言った。
「愛美が鈴奈と知り合いだったのは驚いた。
いつ知り合った?元々知り合い?それを隠してたのか?」
怒りの理由はそこにあった。
私と鈴奈に接点はないと思っていたのに、
なぜか「お久しぶりです」と話し掛けた私。
自分の知らない所で、接触されていたのが、気に入らないらしい。