黒愛−kuroai−
彼を部屋に入れるのは初めて。
キョロキョロ見回し、机の上のブライダル情報誌の山を見て、嫌な顔をする。
それから、ピンクのカーテンに目を止めた。
北側の壁をスッポリ隠す大きなカーテンは、この部屋で存在感を放っている。
その向こう側に何があるのか…
誰もが聞きたくなるだろう。
でも、柊也先輩は何も聞かず、すぐカーテンから目を離した。
そんな事に、気を逸らす暇はないと言いたげ。
ベットに座り、鋭い視線を私に向け、すぐ本題に入ろうとしている。
彼が口を開く前に、先に喋り出す。
ニッコリ笑い、
“彼女の部屋に遊びに来た彼氏”
そんな楽しい雰囲気を作ろうとした。
「学校さぼって、家族の留守に2人切り…新鮮でいいですね!
ドキドキしちゃいます!
今、お茶とお菓子持って来ますね?」
「何も要らない」
「私が要ります。
近所の人に貰った美味しいクッキーがあるんです!
紅茶と一緒に持って来ますから、待っていて下さい」
部屋を出る。
ドアを閉めてから、言い忘れを思い出し、再びドアを開けた。
ベットから立ち上がろうとしていた彼。
私に驚き、ビクリと体を揺らす。
真顔でジットリ見詰め、それから口の端を弓なりに吊り上げ、微笑んで見せた。
「言い忘れていました。
私の物に勝手に触らないで下さいね。
そのピンクのカーテンも……………………………………絶対に開けてはダメですヨ…」