黒愛−kuroai−
お湯を沸かし、紅茶を入れる。
昨日、衝動買いしたペアのマグカップ、
合わせると、2人の天使がキスするデザインになっている。
新婚生活で使おうと思い買ったけど、早く使いたくなり、琥珀色の紅茶を注いだ。
クッキーはハート型の皿に盛り付け、マグカップと共にトレーに乗せる。
零さないようゆっくり階段を上り、足音を忍ばせ、ドア前に立つ。
片手にトレー、片手にドアノブ。
静かにドアを開けると、彼はベットに座っていなかった。
ピンクのカーテン前に立つ背中が見える。
カーテンは開けられていないが、ヒダに触れる手が震えていた。
震える以外に動きはなく、私が入って来ても反応しない。
真後ろに立つ。
それでもまだ、気付かない。
気持ちがどこかに行ってるみたいで、背後の気配すら感じ取れない。
「セ・ン・パ・イ」
耳元で呼び掛けると、彼は悲鳴を上げ、飛びのいた。
私から距離を取り、カーテンと逆側の壁に背中を付ける。
3メートルの距離を開け、向かい合った。
「ミタ…?カーテンの中…」
「み…見てない…」
「本当に…?」
「本当…何も…見てない…」