黒愛−kuroai−
なだらかな下り坂を進むこと10分。
ようやく雑木林が途切れ、視界が開けた。
100メートル先に、白くそびえる灯台と、群青色に波打つ海が見える。
豆粒大の漁船が二隻。
鴎の鳴き声に、絶え間なく打ち寄せる波の音。
強く冷たく、潮臭い風が吹き荒れている。
灯台の向こう側は切り立つ崖だった。
晴天の日なら良い景色と言えるが、灰色空の下では、白い灯台も広がる海も、汚れて見えた。
早速崖の方へ向かおうとすると、柊也先輩に腕を掴まれた。
「待って。自販機見つけた。
喉渇いたから、買って来る」
さっきから、キョロキョロしていた彼。
何を探しているのかと思ったら、自動販売機を探していたみたい。
彼が指差す先に、小さな釣り具屋があった。
その店先に、白い自販機が見える。
「買って来るから、待っていて」
と言われたが、離れるのは嫌なので、付いていく。
ボロイ釣り具屋は、営業中。
車が2台止まっていて、ちゃんと客もいるらしい。
細い砂利道が下に向かって伸びていた。
行き着く先は、きっと海岸。
釣り客はここで車を止め、歩いて釣り場まで向かうのだろう。