逢いたい~桜に還る想い~

ココねーちゃんが、おめでた……


出産で帰国して、うちに同居する……


て、ことは───恐らく郁生くんも、そのまま居るってこと。


さっき、郁生くんが何か言い掛けたのは、きっとこのこと……


確かに、『おねーちゃんが帰ってきてくれれば』と思っていた時もあったけど……


───あの頃と、変わってしまった。


一緒にいるだけで愛しさが溢れてしまうこの気持ちも、

呼び覚ましてしまった、前世の記憶も……


繋がってしまった、二人の心も、

キスをして、抱きしめあったあの夜も……



郁生くんと離れる覚悟はしていたけど、

また、一緒に顔を合わせて暮らすなんて、出来るの……?


しかも、おねーちゃんが……郁生くんの母親がいる前で、あたしはどんな顔をしたらいいんだろう。



あたしは、胸の奥に甘く苦い痛みを覚えながら、

何も知らなかった頃に待ち望んでいた姉の帰国に、妙な緊張と不安を感じていた………



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