逢いたい~桜に還る想い~
突然の声に、あたしは現実に引き戻された。
ネジ巻きの止まりかけた人形のように、ゆっくりゆっくりと顔をあげると、
「………郁生、くん……」
郁生くんは驚いた表情で、あたしの手を───手の中の包丁を、凝視していた。
「トーコさん……」
郁生くんは静かな声であたしの名を呼ぶと、
あたしが手にした包丁をそっと受け取り、元の場所に戻した。
その一連の動作を固まったまま見ていたあたしは、
───がくんっ…と、糸が切れたように、その場に座り込んだ。