逢いたい~桜に還る想い~

「あの泉の桜を見た時『あぁ、この桜だったんだ』って思ったの。

でも……なんでだかは分からない。あそこには……行くの初めてだったのに。

“懐かしい”って思うなんて……。

そしたら───」


「うん」


「熱出して寝込む前に───怖い夢、見た……」


「夢?」


あたしは、知らず知らずのうちに、自分の胸の前で手をぎゅっと握り合わせていた。


鮮明に残る───手のひらの“赤”を思い出して、身体が震える。


「………無理に話さなくて、大丈夫だよ」


あたしの様子に気遣う郁生くんに、


「いいの! 郁生くんに聞いて欲しい! ……郁生くんだから……」


「………分かった」


あたしの真剣な表情に、郁生くんが頷く。


「………あの泉に…“あたし”がいて、ね──何故か、着物を着ていて──泣いているの。

………泣きながら、誰かに謝ってる……」


「………」


「そして、ね……その手に………」



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