みあげればソラ
暫く沈黙が続いた。
勢い余って押しかけた太一だったが、何か具体的な策があったわけではなかったのだ。
姉に一目でも会いたい、その一心でここまでやって来た。
姉を想う気持ちは変わらない。
彼は拳をぐっと握って涙を拭うと口を開いた。
「でも……、僕と姉ちゃんは姉弟だ。
今までずっと一緒にいたんだ。
僕が……、僕が姉ちゃんを守る!」
そう言って食ってかかる少年から、弘幸は面倒くさそうに目をそらした。
「馬鹿いってんじゃねぇよ。
自分のケツも拭けねぇガキのくせして。
お前が立派な男なら、親に隠れてこそこそここに来るんじゃなくて、親を説得して沙希を引き取りに来させろ。
話はそれからだ」
弘幸は取り合おうとさえしなかった。