みあげればソラ
美亜を見つけたあの雨の夜から、暫く美亜の身元は判然としなかった。
捜索願いも出されていなかったし、彼女自身が何も語ろうとしなかったから。
言葉を失ったって、意思の疎通はいくらでもできる筈だけど。
紙に書くとか、いろいろさ。
あの時、美亜は、身元不明のただのミアでいたかった。
できることなら、何も知られたくも知らせたくもなかったんじゃないかな。
学校からの連絡で、仕方なく彼女の母親が美亜の家出人捜索願を出したのは、なんと一週間後だった。
その間、俺と美亜は、二人でこの家に居たわけだけど。
美亜が未成年だとわかって、母親不在のこの家に、無職の俺と二人っきりって状況が、いろいろ面倒な事を巻き起こした。
美亜は真面目で成績優秀な生徒だったらしく、俺が無理矢理関係を迫ったんじゃないかとか、監禁してたんじゃないかとか、根も葉もない想像で攻撃された。
冗談じゃねぇ!
俺は死にそうな美亜を助けた命の恩人だぞっ!
犯罪者にされてたまるかっ!
結局、美亜自身が保護士の先生に詳しく家出の状況を説明して、事なきを得たんだけど。