みあげればソラ
彼女の母親は、形式上、一度だけ美亜を引き取りにこの家までやってきた。
追い出した本人が迎えに来るって、有りえねぇだろ?!
全くお役所仕事ってのは、こういうことを言うんだなと俺は思ったね。
その女は、美亜を蔑むような冷たい目で見ると大声で言い放ったんだ。
「帰ってこれるもんなら、帰ってきな!」
ってね。
それが何を意味するのか、俺には皆目見当はつかなかったけれど。
美亜が愛されていないことだけははっきりとわかった。
勿論、俺も美亜をそんな所へ返すつもりはなかったし。
けど、独身無職の男が一人で未成年の女子を引き取るわけにはいかなくて。
結局、母親に頼る形になっちまった。
海外に取材に出ていた母親が急遽呼び戻されて、すったもんだの手続きの後、やっと美亜がこの家に留まることが許された。