みあげればソラ

果たして自分にそんな能力があるのだろうか?

こんな簡単に他人の行為に甘えて良いものだろうか?

今までの自分の境遇を考えると、俄かには信じがたい高待遇だ。

でも……、と由貴は考えた。

なりたい自分を思い描くと、何だか自分に自信が湧いてくる気がしたのだ。

今、ここに留まることしか出来ない自分がもどかしく、引け目を感じる要因ではなかったか。

将来に希望の持てない自分が惨めで不安だったのだ。

このままではいけない。

このままで良い筈がない。


ふと目を上げると、美亜と目が合った。

言葉を発しない彼女の瞳には、不思議な魔力がある。

全てを肯定する魔力。


『大丈夫だよ、きっと上手くいく、頑張れ!』


その瞳は、そう言っていた。
< 66 / 207 >

この作品をシェア

pagetop