みあげればソラ
美亜は仕方なく弘幸の背中に腕を回し、彼の身体にしがみ付いた。
「ミア?」
弘幸の胸に顔を埋め、力の限り抱き付いた。
言葉で伝えられないなら、行動で示すしかない。
「ミア?」
弘幸の言葉も耳に入らないくらい、美亜は身体に力を入れてしがみ付いていた。
鼻がつぶれて呼吸も苦しくて、次第に意識が遠のいていった。
美亜が意識を失って弘幸から離れた時、彼の背中には美亜の深い爪痕が残った。
はじめて見せた美亜の本気は何を語ろうとしていたのか。
自分に縋りつく美亜の姿に最初は少しの下心を抱いた弘幸だったが。
背中に食い込む爪の痛みで、彼女の必死さにただ圧倒されてしまった。
血の滲む背中に絆創膏を貼りながら、彼は倒れた時の苦痛に歪んだ美亜の顔を思い出す。
ここに居たい、ということだけは分かった。
だが、それは今となんら変わらない状況だ。
それほどまでに彼女が必死に訴えようとしたのは何だったのか?
結局、いくら考えても、弘幸には美亜の本音を理解することはできなかった。