みあげればソラ
突然の抱擁に身を堅くして戸惑う美亜。
「試験に受かったからって、何かが突然変わるわけじゃない。
でも、前に進むことが肝心だ。
お前だって、ずっとこのままでいいとは思ってないだろ?
最悪の時は過ぎた。
これからは、夢を見る時間だ。
俺は、ミアに夢をもって貰いたいんだ」
『夢……』
(わたしの夢は……、ずっとこのままでいること)
弘幸の望む夢は多分、未来に向かった夢。
大学に進むとか、何かになりたいとか、何処かへ行きたいとか。
その為に弘幸は夜の仕事で生計を立て、美亜との生活を守ってくれている。
その期待には応えたい。
でも、先には進みたくない。
今の幸せを失いたくない。
そんな美亜の本当の気持ちを、弘幸は理解できるだろうか?