この愛に抱かれて
2人は店の裏手にあった木戸から中に入った。


和室の部屋へ向かうと、女は響子に部屋で待つように言った。


暫くして、女は板前を連れて戻ってきた。



「まぁ、楽にしておくれ」

緊張していた響子に女は声をかけた。


「あたしはこの店の女将、花村房江。・・・で、この人はうちの板前で松永正治。あんたを崖の上で捕まえた人だよ」


響子が松永を見た。


「無事で何よりです」

松永は言葉少なにそう言った。



「セイさんが、フラフラ歩いてるあんたを見つけたんだよ。その先は海しかないからね。夕方、海へ一人で行く女なんて薄気味悪いじゃないか。それで、後を追いかけたってわけさ」
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