この愛に抱かれて
客室の見回りをしていた房江のところに、板長の松永が駆け寄ってきた。



「なんだい、セイさん。血相変えて。・・・あの子が指でも切ったかい?」


「そ、それが女将・・・」

松永は房江を板場に連れて行った。



板場に入った房江は響子の切った人参を見て驚いた。


人参の皮は ものの見事に剥かれていたのだ。



房江は そばにあった大根を手に取ると


「これ、切ってごらん」と言って響子に渡した。


響子はそれを受け取ると 適当な太さに輪切りにし、スッスッと手際よく桂剥きにした。
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