彼氏契約書
ばかばかしい、そんな事言えるわけがない。

絶対、口が裂けても言えない。

…トントン。

「・・・どうぞ」

そんな事ばかり考えていると、ノックする音が聞こえた。


私は咄嗟に応え、ドアはそっと開かれた。

「…どうしたんですか?アポなしでこんな所まで」


突然目の前に現れた人物を見て、思わず口走る。


「ごめんなさい、仕事は順調に進んでいるし、

仕事の用事で来たんじゃないの」

そう言って微笑んだのは、今一番大事な取引先、

宮路美麗社長、その人だった。


「…仕事の要件じゃなければ一体?」


「プライベートな事なんですけどね・・・

貴女と秘書の須藤君との関係が知りたいの」


「…須藤との。関係、ですか?」

「えぇ」


…また唐突にそんなことを聞かれても、

返事に困る。

「…上司と部下、それだけですが」
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