恋するほど   熱くなる
翌土曜日いつものように事務所へ出勤した。

荒木さんの姿がなかった。

こんなことは初めてだった。

嫌な予感がした。

胸騒ぎとはこういう気分なのかとも思った。

香織さんに聞いた。

「荒木さんはいらっしゃらないのですか?」

「彼はオフよ。しかもこの七年間で最初のね。中澤所長も榊部長もびっくりしてらっしゃるわ。」

「私もびっくりです。」

「私はそうでもないわ。今日のオフが最初で最後でなければいいけどね。」

「そうですね。」

私は呆然とした。

確か今日のスケジュールは雑誌のインタビューか何かだ。

違うのかしら?

荒木さんのデスクのパソコンに向かった。

私宛てのメールだわ。

何かしら?

『美莉へ、今日の予定は以下の通りだ。』

自分が思うことを書けとあった。

テーマは

この妖精プロジェクトの特別賞に選ばれ

モデルの仕事を経験し

学んだこと

これからこのプロジェクトに求めること

何でもいい

君の意見・要望・感想・苦情を書いてくれればいい

とあった。

「ふふん、私の意見ですって?お望み通り書いて差し上げるわ。」

私は一日中荒木さんのパソコンへ入力していた。

ものすごい文量になった。

項目ごとに整理して保存した。

題して『美莉の御意見で候』だ。

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