吐き出す愛
薄々とは気付いていた。
ずっと嫌いだという意思を貫いてきた人を受け入れるのが、難しいということ。
嫌いな部分なんて、そう易々と好きに変わるわけでもない。
ましてや有川くんの周りには相変わらず女子が集っていて、彼は来るもの拒まずの状態のまま。
別に有川くんが誰と仲良くして遊ぶのかなんていうのは自由だけど、そんな姿を見ていると、私を好きだと言うのもやっぱり遊びの1つなんじゃないかって思えてくるんだ。
だけど、良い部分を見ていると少しずつ信じたい気持ちが芽生えたわけで。
信じるためには、少しは嫌いだった部分から目を逸らすことも必要だって思った。
だから有川くんの良い部分と嫌な部分を混ぜて、彼に対するイメージを良くしてきたつもり。
……でも、所詮混ぜたって中身は同じ。
イメージが完全に中和されることなんてなかったんだ。
さっきの会話を聞いただけでも、また有川くんの嫌な部分が浮き彫りになるぐらいだから。
分かっていたことを、再認識しただけ。
そう言い聞かせて有川くんの過去を忘れようとするのに、鏡に映った私は未だに浮かない顔をしている。
変なの。何か、苦しいんだ。
以前は有川くんの嫌な部分を意識したって、嫌だなあって思って終わりだった。
それなのに告白されてから嫌な部分を見るたびに、嫌だと思うよりも前に胸の奥が軋んでいるんだ。
そしてその軋みが起こるのは、嫌な部分を見たときだけじゃない。
返事を決めるために有川くんのことを考えるときや姿を見かけるときに、胸がきゅうっと苦しくなる。
この感情は何なのだろう。何という気持ちなのかな。
誰かのことを考えて胸が締め付けられるのは、有川くんだけだ。
有川くんだけで起きた、初めての感覚なんだよ。