吐き出す愛


 そういえば有川くん、自習じゃない6時間目もサボってたもんね。
 私としてはあのキスシーンを見たあとだったから、隣の席に居てくれなくて助かったけど。


「……」


 あのあともあの女の子と一緒に居たから、サボってたのかな……。

 そんな考えを巡らすと、またズキンズキンと心臓が痛くなって暴れだす。

 だから気を紛らすように、辿り着いたごみ箱にちりとりの中身を勢いよく滑らした。
 舞い上がった塵に、目と喉が痛くなる。

 最悪だ。これは自分のせいだけど、やっぱり今日はとことんついてない。

 おまけにうんざりしながら引き返そうとしたところで、追い討ちをかけるように先生に呼び止められた。


「あっ、高崎!」

「……はい?」

「悪いんだが、そこに居るついでにごみをごみ置き場に持って行ってくれ。燃えるごみと燃えないごみは、どっちも袋がいっぱいになってるから」


 先生は有川くんを教卓に取り残したまま私のもとへやってくる。

 何か、嫌な仕事頼まれちゃったなあ……。

 もともと下がり気味だった気分がさらに下がる。

 先生はごみ箱から袋を取り出して結ぶ作業を手伝ってくれると、私から箒とちりとりを取り上げた。


「これは俺が片付けとくよ。新しい袋も被せておくから」

「あっ、ありがとうございます。……じゃあ、行ってきます」

「いやいや高崎、ちょっと待て」

「えっ?」


 パンパンに膨れた2つのごみ袋を両手に1つずつ持ち、さっさと行ってしまおうと意気込んだところで、何故か制止をくらってしまった。

 まさか、まだ何かを頼む気じゃないでしょうね?

 嫌な予感がして気構えるけど、先生の口から飛び出したのは予感以上のことだった。

 先生は振り返ると、逃げ出すわけでもなく大人しく待っていた有川くんを呼び出した。


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