吐き出す愛
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あの日のことを悠長にいつまでも考えている余裕も得られないまま、2月が終わった。
そして訪れた3月上旬には受験日を向かえ、私は縋りつくような思いでそれに挑んだ。
そして得た、高校への切符。
それを手にして向かった先には、優子も、そして有川くんも居ない。
“合格”の文字に貰った未来は望んでいたもののはずなのに、ひどく悲しいもののように思えた。
――3月下旬。
進学先も決まっていた私は、無事に中学校を卒業した。
張り詰めた空気の中で行われた卒業式も終わり、今はすっかり明るいお祝いモードの放課後。
友達や先生やクラスメートたちと最後の別れを惜しむその時間、私は優子と一緒にまだ教室に残っていた。同じように残っているクラスメートもちらほら居た。
窓際の自分の席からは、クラスでの打ち上げに行く人達が昇降口前に集まっているのがよく見える。
中学校生活最後の隣の席の人も、きっとその集団の中に居るはずだ。彼はいつだって、人の中心に居る人なのだから。
だけど私はその姿を想像するだけで、確認はしなかった。
窓の外の光景から、机上のものに視線を戻す。
そこに広げてあるのは、優子の卒業アルバム。私はその寄せ書きのページにメッセージを書いている途中で、ついうっかり余所見をしてしまっていた。
「……良かったの? あいつと話さなくて」
私が知らず知らずのうちに彼の姿を探していたことを察したのか、前の席に腰かけていた優子が遠慮がちにそう言う。
すぐに口を開くと押し込んでいた何かが溢れてしまいそうで、一度唇を噛み締めてから言った。