吐き出す愛


「……いいの。話す必要すらないし」

「そっか……」


 残念そうに溜め息と共に呟かれた返事を聞きながら、メッセージを書き込むためにペンを動かす。

 その頭の中は、全然落ち着いていなかった。


 あの日から半月ちょっと。
 私と有川くんは席替えをする以前のように、まったく関わらないでその時間を過ごしてきた。

 それは意図して関わらないというよりも、避けていたという言葉の方が正しいのかもしれない。

 顔を合わせることはおろか、視界に入れることさえ徹底して拒んできた気がする。
 だからもちろん、口を利いたのもあの日が最後。

 そんな状態を一番側で見てきた優子だからこそ、気にかけてくれているのだろう。
 あの日からずっと、有川くんと話すように諭してくる。さっきの言葉もそれだ。

 ……だけど、今更話すことなんてないんだよ。

 話なら、あの日にすべて終わった。もうこれ以上話すことなんてないんだ。

 最近は有川くんと関わることが当たり前になっていたから、優子からしたら違和感のある光景なのかもしれない。
 けど本来は、関わらないのが私にとっての当たり前だったんだ。

 だから別にもう、彼は関係ない人だよ。

 最初と同じで、別の世界の人なのだから……。


 キュッ、キュッ。
 ペンを動かすたびに摩擦音が鳴る。

 それを飲み込むような騒ぎ声が窓の下から聞こえてきて、きっと彼だろうなと思った。

 その姿を確認したのか、優子が呆れたような声で言う。


「……あいつ、佳乃に振られてから何か自棄になってる感じだよね。あんな状態なのに、よく行く高校が見つかったもんだわ」


 メッセージを書き終えてペンを置くと、優子の言葉に誘われてまた窓の外を見ていた。


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